他業界に溶け込むITのチカラ

Company, Student2019.7.26

ビジネスに”直結”する人材育成

小国 幸司|ネクストリード 代表取締役

IoTに代表されるデジタルトランスフォーメーションの動きが様々な産業に広がるなか、IT人材の不足が懸念されている。これを打開するべく、政府はプログラミング教育の必修科など対策を進めているが、依然として課題は多い。

 今回は、”ビジネスに直結するIT教育”を手掛ける2社の取り組みを紹介する。

 毎年11月は、推進4省庁(総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省)に学識者や民間事業者などを加えた”テレワーク推進フォーラム”が首相するテレワーク普及推進施策「テレワーク月間」だ。

 今年は、2020年のオリンピック開会式に合わせて7月24日に開催された「テレワーク・デイ」との相乗効果もあり、企業のみならず地方自治体や教育機関など多数の団体が登録され、テレワークの効果検証や試用など様々な取り組みが行われている。

 なお、詳細については下記のポータブルサイトから確認いただきたい。テレワーク・デイのサイトからは、報告会に参加した先行実例の紹介などのデータもダウンロードできる。

 昨年度から、このテレワーク月間に合わせて、厚生労働省事業として「テレワークに関する体験型イベント」が全国で開催されており(今年は7か所、各2回ずつに拡大)、昨年に引き続き私も講師を務めさせていただいている。今年度はテレワーク関連情報を取得する機会の多い企画や推進担当者ではなく、”労働者”(中小企業経営者も含む)を対象とした、PCでのハンズ形式の体験イベントとなった。

参加者にはITを使いこなしている方で、すべての業務を会社で行うっことが前提でツールや電話やファックス、メールで完結している方も多い。なかには、普段PCに触ることがない方もいる。

 そのため、紹介するコンテンツもIT機能の説明ではなく、「これまでの仕事のやり方がテレワークでこんな具合にもできる」「まずは試してみよう」といった要素をなるべく紹介できるように構成している。幸いにも脱落されす方はおらず、使いこなせた時の楽しそうな表情が印象的だった。終了後は「メールで止まっていたが次の世界がわかった」と言ったコメントをいただくなど、都会で働くホワイトワーカーには当たり前となりつつあるユニファイドコミュニケーションの入り口へと誘導する助けの1つにはなれているのではないかと思う。

 また、講師である私にとっても、普段はなかなか接点の持てない地方企業の経営者や従業員の方々から様々なご相談、ご意見を頂戴する場として、逆に多くのことを学ばせていただく貴重な機会となっている。

“IT教育”の難しさ

 さて、こうした活動を続けるなかで痛感していることがある。自分の知識をコンテキストの異なる相手(用語や文脈をなんとなく知っている相手ではなく、全く知らない相手)に誤解なく伝えることの難しさだ。

 特に昨年は、意識して減らしているつもりでも、「IT業界」によくあるカタカナ語や略語をつい口に出してしまい頻繁に質問されるなど、失敗も多かったように思う。また、”難しさ”は相手に関しても言えることで、PC操作で悩むポイントや疑問に思う点は実に様々だ。同じ解説を開いていても、理解のプロセスや直面した課題の種類によって、理解の速度が人によって違うこともよくわかる。(この辺りは第5回で紹介した「人の特性の見える化」の適正が関係しているのかもしれない)

 教わる側にとって未知の事象をどう表現して適切に伝えられるか、そして、その後の仕事(なり生活)にどう役立ててもらえるかが教育の難しさであり、面白さなのだろう。いつの時代にも教育や人材育成は話題となるが、ITやインターネットの深度が異なる時代が混在する今だからこそ、教育について考えられることも多くありそうだ。

 今回は、身近な育成に関しての取り組みをご紹介したい。

プログラミング教育をサポート

 2020年には小学校で必修化されるなど(中学校が2021年、高校は2022年)、今「プログラミング教育」に注目が集まっている。

 背景にあるのはIT人材の不足だ。第4次産業革命などに起因するニーズの拡大に伴って大量に必要となるIT人材が、2030年には約59万人(シナリオによって41~79万人の幅がある)も不足すると言われている。

 ただし、プログラミング教育には課題もある。代表的なのは「教える側」の育成だ。教員はただでさえ多忙な中、研修を受けるなどしてプログラミングについて多くんことを学ばなければならない。その範囲も、プログラミングの知識だけでは不十分で、利用するツールも多岐に及び、不安を感じる教員も多いという。

 そんななか、先行してプログラミング実習支援の取り組みを行なっているのが、テック・ステート(東京都武蔵野市)だ。代表である杉田和之氏に話を伺った。

 会社の経営もしながら、今も現役のシステム開発者である杉田氏がオブザーバーとして参加している中学・高校生向けの技術教科書を執筆するチームでは、そんな教員の悩みや不安を解決しながら、プログラマーだからこそできる「プログラミング教育」の本質を伝えるための支援を行なっている。

ビジネス現場と同じ環境で

 近年、プログラミング教育は多くの学校で採用され始めている。ゲームを使った「プログラミングや視覚的にわかりやすいブロックの組み合わせによる教育システムなどがその代表例だ。

 しかし、こうした分かりやすさだけが売りのシステムは、プログラミングの構造や概念は理解できても、実際に社会や現場で必要となる「アプリケーション開発」や「サービス開発」に役立てるのは、少し違った要素(ツールや開発環境の理解、使用をアルゴリズムにまで落とし込む技術など)が必要になるという。

 杉田氏のチームはそれを具現化するため、「ライントレースカー」という光センサーとモーターを組み合わせたミニカーを、Visual Basic言語を使ってPCから制御する実習を教科書に取り入れ、授業に利用している。光センサーで車の足元の色を判別して黒線の上を辿ってミニカーを走行させるようなプログラミングの開発を、実際に開発会社でも使われる Microsoft Visual Studio というツールを使いながら学ぶのだ。

 動きのあるトレースかーを教材に使うことで子供達の興味・関心を高めながら、実際の開発者との接点を持つことで自然な形で最新の開発技術に触れられることが魅力の1つだ。現実社会で使われているものと同じ環境・言語を利用した授業を体験することで、培われたスキルがそのまま現実での開発現場で活かすことができるのだという。

 そもそもプログラミング教育の”本質”は、コードやツールの使い方を一夜漬けで丸覚えすることではなく、論理的思考を体験したり、企業の働き手となった際のチームワークの育成したりすることにある。そうした体験ができるこのような取り組みは、今後ますます必要とされるに違いない。

大学生に内面成長の機会を

 もう一つComfort Zone(東京都渋谷区、代表取締役:髙師修平氏)の取り組みも面白い。

 大学での授業では軽視されることも少なくない1人1人の「個性」や「潜在能力」に注目。学生時代から、社会に通用する「人としての価値」を引き出すため、オリエンテーションなどを通じて徹底的に個人のポテンシャルを収集・分析し、様々な形でトレーニングを提供している。

 独自の基本プログラム(これからの時代に必要となる思考法やビジネスパーソンとしての印象構築、はては健康意識など)を展開しながら、並行してセールス・プレゼンテーション・マーケティングやセルフマネジメント手法、さらにリーダーシップなど実際のビジネス現場で必要とされるスキルを学ぶ。こうした考えやカリキュラムに共鳴し、もう一段上の成長を求める一流大学の優秀な学生が多数集まり、日々議論しながら意見を交わしている。

 さらに特徴的なのは、学んだ理論を実践する場としての「企業接点」だ。学校で学んだことと、社会に出て日々の仕事で必要とされる社会に出て日々の仕事で必要とされる要素は違うと感じられる方も多いかもしれないが、Comfort Zoneでは、実際の企業とのインターン機会やディスカッション機会を数多く創出している。「学校で学ぶことの”何を”役立てられるか」「企業の意識をどう吸収するか」を徹底的に考えさせて、自分のものにさせるのだ。

 髙師氏のビジョンや熱い声がけに応えて、国内のみならず外資系企業の経営者や顧問などが集まり学生向けに講義を行ったりすることもあるという。

 個々が持つ”多様性”を最大限引き出すためのComfort Zoneの取り組みには、今後の企業人材育成のヒントが含まれているかもしれない。今後の発展が楽しみな教育への取り組みだ。

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