ビル・ゲイツ氏も認めた マイクロソフト 澤 円さんに学ぶ「プレゼン」

Company, Student, Teacher2016.2.21

10万分の12、パーセントにして0.012%。それが今回の主人公のいる世界だ。分母を構成するのは世界中のエリートが在籍しているマイクロソフトの全社員。その風貌から”マイクロソフトのキリスト”とも呼ばれる澤円氏は、顧客向けイベント「マイクロソフトカンファレンス」で、プレゼンテーションに対する投票により、2年連続1位を獲得。他社製品や旧バージョンを利用する顧客を「浮気させる(振り向かせる)」プレゼン手法で億単位の受注を次々に獲得し、2006年に全世界のマイクロソフト社員10万人の中から、ビル・ゲイツ氏が選ぶ「Chairman’s Award」を受賞した。

 年間200回以上のプレゼンをこなし、多忙を極める澤氏に話を聞くことができた。

|未来への影響を心掛け

 —— プレゼンのほかにも、セミナーの講師も務められていますが、社会人デビューした頃、人前で話す苦手意識はありましたか?

 澤氏「苦手だと思ったことはないですが、すごく好きだったわけでもない。学生時代、ディズニーランドでアルバイトをしていて、人前に毎日毎日さらされていたので、全く気にならなかった。最初に何か発言した方が特になると思う。日本には『出る杭は打たれる』という文化があるので、損することもあるかもしれないが、『出すぎたくいは絶対に打たれない』とも言える。一番初めに質問をするだけで、『一番初めに質問する人』という称号が得られる。それで割と得をしたという、成功体験がもとになって、今の形になっているのかなと思う。」

 —— プレゼンで一番意識していることは?

 澤氏「僕が何かを言うことで、その人が別の人にそれを伝え、2次感染、3次感染のように広がっていくこと。もしくはその人の行動を変えること。ある時点から先の未来に何らかの影響を与えることを一番に心掛けている」

 —— まさに人を動かすわけですね。その人が話す言葉までコントロールしてしまう

 澤氏「コントロールする、はおこがましい。『扱いやすい言葉をプレゼントする』と言ったほうがいい。例えば、面白い話を聞いたけど、それを人に伝える時に難しい言葉のままだと説明できない。だから簡単な言葉で、かつたとえ話も多めに交えて、他の人にも伝えやすい状態にするということ」

|生きた痕跡残す有効な手段

 —— 澤さんにとってプレゼンテーションとは?

 澤氏「会社員の澤円としては、うちの社員やパートナーさんの、お手本であること。それが僕のミッション。だから農法も皆さんに伝えることにしているし、わかりやすい言葉を使って、真似をしやすいプレゼンを心掛けている。特別な能力を持っているわけではないので、創意工夫という誰でもできることをうまくやって、失敗やエラーを少なくしているだけ。誰もが手の届く一つのお手本だと考えている。その上で、プレゼンは自己表現でもあるので、社会に少しでも影響を与えたいと思っている。人生の中で、何かを表現するということは、人々の記憶に何かを残せるということ。その人たちが何らかの形というか、痕跡を残すことができる。プレゼンテーションというのは、そのためにかなり有効な手段だといえる」

|報告はワクワクしない

 —— 日本の企業のトップはプレゼンテーションが苦手だと言われますが

 澤氏「日本が抱える圧倒的に大きな問題。プレゼンに限らず、会議でも報告が多すぎる。報告というのは過去の情報で、それを数値化したり、考察したりすることで共有する。それも大事だが、もっと大事なのはそれを生かして未来を作ること。未来の話をすることに時間を割いていないし、その姿勢があまりにも弱すぎる。日本の成長が鈍化していて競争力も低下している。国際的な立場の低下も含め、未来を描く能力が低く、過去に目を向けすぎていることが原因。例えば、『ケーススタディはないですか?』『何か事例はないですか?』と聞かれることが多い。過去の事例でも大丈夫だから、それを取り入れる。でも、過去にそれをやった人たちは先行している。それよりも先に行く意識がない。報告というのはたいていの場合、ワクワクしない。ワクワクしない話は当然つまらない。報告の積み重ねがあまりにも長すぎるのが、日本のプレゼンテーションにおける問題点。日本のプレゼンテーションにおける問題点。日本からイノベーティブなものがなかなか出てこない理由でもあるのでは」

 —— 何故日本人はそうなってしまうのか?

澤氏「いろんな日本人論があるが、異分子にとても敏感。例えば僕なんかもすごいいいぶんしに見えるけど、髪が長いだけだよ。海外では、髪が長いことは一つの特徴でしかなくて、異分子扱いにはならない。だけど、日本nの場合は、あいつは常識がないって話になる。そして、あの人は外資系だからと言い、同一性を極端に求める」

|インターンで日本が変わる

 —— 日本企業には、そういう変化が必要?

 澤氏「外資系にいると、人が去ることを経験する。日本の企業は、指名解雇で『おまえ、クビ』っていうことができない。終身雇用がベースとなっていて、労働者の権利を守ると言うと、聞こえはいいけど、一度雇ったらどんなに能力がなくてもキュウリ¥料を払い続けないといけない。企業全体からするとすごく迷惑な法律だよね。働く側にしても、向いてない仕事であっても会社にいることができてしまうので、キャリアを無駄にしているという考え方もできる。クビにすればいいという乱暴な話ではなく、向いていない仕事でも続けられてしまうということは、人をハッピーにしないのではないかというのがb多くの考え方」

 —— 終身雇用と年功序列の仕組みはなかなか変わらない

 澤氏「社会的なセーフティーネットの存在が前提だが、もっと人材が流動して、自由に仕事を選べて、仕事をすごく面白いと思えるようにすることが理想。年功序列なんてくだらないルールはやめて、実力がある人、パフォーマンスを出せる人が、そのせいかを報酬としてちゃんと得られるようにする。もちろん家族的経営にも日本的なよさはあるけど、国際競争がこれだけ厳しくなってくると、ちょっと勝ち残れない。インターン制度を充実させるのも一つの手だ。大学4年になったら半年間はいろんな会社を経験できるようにするとか。そうなったら、自分に向いているのか分かった上で企業を選ぶことになるので、企業側も納得して受け入れることもできる、インターン制度がもっと充実してくると、日本の企業も変わってくると思う」

|全員がギブできるものを

 —— 大学生の育成や社会人向けの研修を行うビジネススクール 、髙師塾ビジネススクールの講師も務め、次代の人材育成に力を入れている。その理由は

 澤氏「危機感。でしょうね。いろんなお客さんとお話しさせてもらうなかで、このままだったら絶対に日本は勝てないなっていうのがよく分かる。例えば、日本に来たアジアの国の方にプレゼンをする機会があるのですが、彼らは成長に対して貪欲で、日本を非常に尊敬していて目標にしている。そして、いつか日本を抜きたいと思っている。でも、日本と同じことをしても勝てないから、違うやり方、要するにショートカットを考えている。だから日本から多くを学んで帰るたいと考えている。ちなみに、普通に学校で習っただけというが、英語がうまい」

 —— 学生にメッセージを

 澤氏「日本はいいものを持っているのに、それを発揮しきれていない。もっといろんな可能性を試してほしい。いろんな人と会って、視野を広げ、色んな考え方に触れることが必要。もっと、アクティブにコミュニケーションを取って、できればその時に、相手にギブ(与える)できることがあればいい。自分が他人に何か与えられないかを考え、全員がギブできるものを持ってほしい。そんもことで自分が一番でじゃなくても、2つ以上を組み合わせればいい。両方できる人は少ないというものを見つけられれば、それはユニークになる。そういう風にキャリアを積み重ねてもらえればいいかなと思う」

CATEGORY